レッスン中、生徒さんの手が止まったり、表情がかたくなったりして、「今の言い方、強かったかな」と、あとから気になった。ピアノの先生なら、そんな日があるのではないでしょうか。
先に結論です。注意が上から聞こえるのは、先生の気持ちが強いからではなく、「できていない所」から話しはじめているからです。「次にやる1つ」から話しはじめると、同じ内容でもやわらかく届きます。
この記事では、ピアノのレッスンで生徒さんに注意するときの言い方を、上から聞こえる理由、言いかえ例、自分の言い方の見直し方の順にお話しします。
この記事で分かること
- レッスン中の注意が、上から聞こえてしまう理由
- できていない所より「次にやる1つ」を言う、言いかえ例
- 自分の言い方を、ボイスメモの文字起こしとAIで見直す方法
※ 例文の一人称は「私」で書いています。ご自分の言い方(先生・お名前など)に直してお使いください。
レッスン中の注意が、上から聞こえる理由

レッスンの注意が上から聞こえる理由は、おもに3つあります。
- できていない所を先に言う(「そこ、違いますよ」)
- 答えが決まっている質問をする(「ここ、前に言いましたよね?」)
- 直し方を言わずに、直すことだけを求める(「もっとちゃんと弾いて」)
どれも、先生は教えようとして言っています。けれど、生徒さんには、「だめだと言われた」「試されている」と聞こえることがあります。とくに、人前で弾くのに緊張している生徒さんや、小さなお子さんは、先生の言葉をそのまま重く受け取ります。
話した本人は、そのときの声のやさしさや表情を覚えています。でも、相手に残るのは、言葉のほうです。だから、言葉の形を少し変えるだけで、伝わり方が変わります。
できていない所より、次にやる1つを言う
言いかえの基本は、「できていない所」を言うかわりに、「次にやること」を1つだけ言うことです。いくつか例を挙げます。
- 「そこ、違いますよ」→「その小節だけ、ゆっくり、もう1回弾いてみましょう」
- 「ちゃんと弾いて」→「右手だけで、1回弾いてみましょうか」
- 「前にも言いましたよね」→「ここ、いっしょに確かめてみましょう」
どれも、言っている中身は同じです。違うのは、生徒さんが次にやることが、はっきり分かる点です。
たとえば、こんなふうに声をかけます。
そこだけ、ゆっくり、手をたたきながら言ってみましょう。
そのあと、もう1回弾いてみましょうか。
先に「そろいそうです」と、できている手前の所を見つけて言います。そのうえで、次にやることを1つだけ伝えています。ほめるために、うそを言う必要はありません。本当にそろいかけていることを、言葉にするだけです。
ほかにも、次の2つを気をつけると、上から聞こえにくくなります。
- 「?」で終わる質問は、本当に答えを聞きたいときだけにする
- 「〜してください」が続いたら、「〜してみましょう」を混ぜる
全部を一度に変えようとしなくて大丈夫です。まず、今日のレッスンで、言いかえを1つだけ試してみてください。
自分の言い方を、ボイスメモの文字起こしで見直す

自分がレッスンで話した言葉は、自分では、なかなか思い出せません。そこで、レッスンの一部を、ボイスメモで録音します。それを文字にして、AIに読んでもらいます。
録音する前に、生徒さん(お子さんなら保護者の方)に、ひとこと伝えておきます。全部を見直す必要はありません。気になった5分くらいの所だけで十分です。
文字起こしができたら、次の文を、そのままAIに貼ります。【 】の所に、文字起こしを入れます。
下は、レッスン中に先生が話した言葉を、文字にしたものです。
その生徒の気持ちになって読み、次の形で答えてください。
1. 言われてうれしかった言葉(そのまま引用して、3つまで)
2. 上から言われているように聞こえた言葉(そのまま引用して、3つまで)
3. 2の言葉の、伝わる言いかえ
4. このままでいい所(先生らしさが出ていて、変えないほうがいい所)
先生が話した中身(教えた内容)は、変えないでください。
【ここにレッスンの文字起こしを貼る】
貼る前に、文字起こしの中のお名前は、消しておいてください。
この頼み方は、「このままでいい所」も出してもらうのが大事なところです。直す所だけを見ると、気持ちが沈みます。先生らしさは、変えなくてよい所として残します。
AIの答えは、毎回少しずつ変わります。言いかえ例は、そのまま使うのではなく、自分の言葉に直して使ってください。AIは秘書です。決めるのは、先生です。
ここで、ひとつ大事なことをお伝えします。言いかえは、ていねいな言葉に変えることではありません。「相手が次にやることが分かる」ように変えることです。
たとえば、生徒さんが同じ所で何度もつまずくとき、「何回言ったら分かるの」という気持ちになる日もあるかもしれません。そんな日は、気持ちを言葉にするかわりに、やることを小さくします。
まず、左手だけ、4拍ぶんだけ弾いてみましょう。
それができたら、右手を足してみましょうか。
小さくすることは、できなかった日の生徒さんを、守ることにもなります。「やらなきゃ」と身構えていた気持ちが、「それならできそう」に変わります。
また、生徒さんが小さなお子さんのときは、保護者の方も、レッスンのすぐ横で聞いています。先生の言い方は、お子さんだけでなく、保護者の方にも届いています。上から聞こえない言い方は、教室全体の安心感にもつながります。
言いかえに慣れるまでは、よく使う注意の言葉を3つだけ、紙に書いて、ピアノの譜面台のそばに置いておく方法もあります。レッスン中に、すぐ目に入るので、口から出る前に、言いかえに気づきやすくなります。
まとめ
- 注意が上から聞こえるのは、できていない所から話しはじめているから
- できていない所より、「次にやる1つ」を言うと、同じ内容でもやわらかく届く
- ボイスメモの文字起こしをAIに読んでもらうと、自分の言い方の癖が見える
今日やることは、1つだけです。次のレッスンで、「そこ、違いますよ」と言いそうになったら、「その小節だけ、ゆっくり、もう1回弾いてみましょう」に、言いかえてみてください。「やらなきゃ」を、「やれた」に。私は、いつでも先生の味方です。
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